輝く女性たち

峰松 弘子さん / (一社)長崎キャリア支援センター代表理事、ジョブマッチネットワーク長崎代表

 

峰松弘子さん

 

 

 私は30年近く小学校の教師をしていました。いろいろな可能性を持つ子どもたちの力を引き出していく仕事は、天職だと思っていました。すべての子どもが、将来自分で経済的自立をし、生計を立てていけるように、その夢を叶えるための仕事に誇りを持っていました。

 しかし、障がいがあったり病気になったりした方は働きたいという希望があっても、ほとんどの方が働けないという現実がありました。

 私は教育の現場で出会ったこの個性的な発想や人間力を発揮してくれる人の働けるしくみが作れないか、そう思って就労支援について学びを始めました。

 

 2011年3月11日、全国のジョブコーチと一緒に東京の特例子会社に訪問中地震に遭いました。私たちにとって本当に怖い経験でしたが、その会社の従業員の方は重度の障がいがあるにも関わらず、落ち着いて仕事をされていました。事業主の方の危機管理対応が行き届いて、信頼関係が構築されていたのです。

 

 

 

 

 長崎に帰り「ソカイネット」という被災した方を支援しようと集まってきた人との出会いを経験しているうちに、「人生はいつ終わるかわからない。勇気を出して働く一歩を応援する活動は今やろう。」そう思って設立したのが「ジョブマッチネットワーク長崎」です。設立日は2012年1月12日ですから、活動からちょうど6年になります。

 現在では、国の制度整備や医療・教育・福祉の連携などが進み、関連するサービスを提供する機関が増えてきましたので、これからの「ジョブなが」は、より地域の方にその理解をしていただくパイプ役としての役目を担当していこうと思います。

 

  企業の中のダイバシティマネジメントに関する情報提供も、生涯働き続ける仕組みを作っていくうえでとても大切です。企業の経営戦略としてのダイバシティマネジメントを進めるためにも「長崎キャリア支援センター」は、多様な人材を活かした働き方の提案をし、だれもが働くことを通して社会参加できる「共生社会」の実現を目指します。 

 

日本精神障害者リハビリテーション学会第25回久留米大会発表

 

ジョブコーチ支援研修会案内

 

  今自分のキャリアについて振り返ってみると、長崎の産業界を中心に全国の方と出会い、日本の働く仕組みについて学びを継続できているのも、父方の両親が新大工町で乾物屋さんを、母方の両親が大浦で文房具屋さんを営んでいたという事が影響しているのかもしれません。

 一人っ子だった父は、商店街という所で生活を営むための厳しさや人としてのやさしさを学んで大きくなりました。そして長崎商業高等学校へ勤務、進路担当となりました。

 出島交流会館から世界の海に繋がる美しい長崎港を見ていると、生前父がよく言っていた言葉を思い出します。

 「みんな仲良く力を合わせて、仕事も食べ物も分け合って笑顔で暮らしていける町にせんばいかんとよ。」

 私は父の言葉のように、20年後、30年後の長崎、日本は笑顔で働き続ける人が今よりもっと増えていく、そうなるために自分のできることをやりたいと改めて思っています。

(更新 平成30年1月)

ライフ年表

22歳 小学校勤務(正規採用12年 臨時的任用15年 その間通級学級担当も経験する)
52歳 就労支援に関する学びを始める(認定心理士、初級教育カウンセラー資格取得)
    長崎市障害者施策推進協議会委員として三期務める
53歳 「ジョブマッチネットワーク長崎」設立
    キャリアコンサルタント(国家資格)、産業カウンセラー、職場適応援助者(ジョブコーチ)
    ジョブカード作成アドバイザーなどの資格を取得
    長崎県産業振興財団主催 NAGASAKI起業家大学第13回期生
    長崎県ビジネス支援プラザへ入居し、社会事業家としての基礎を学び始める
    職業紹介士 取得
57歳 「一般社団法人 長崎キャリア支援センター」設立
    中小企業庁ミラサポ登録支援専門員登録
    経営技術基盤・強化支援事業 長崎エキスパートバンク専門家登録
58歳 長崎県職業能力開発協会 キャリア形成サポーターとして働き始める
59歳 株式会社ワークライフバランス認定コンサルタント登録

  • 現在の仕事(活動)を始めるきっかけ又はやりがい
  • 【ジョブマッチネットワーク長崎】
     普通は出会うことができない人と出会えることです。出会った方、あるいは電話相談の場合は電話で繋がった方の気持ちを引出し、その方の可能性を伝え、必要な情報提供をします。相手の方が安心されると私まで嬉しくなります。社会貢献活動なので、他の活動家の方々との交流も楽しみです。
    【一般社団法人 長崎キャリア支援センター】
     対象を企業・団体にしぼり、社員様一人一人の職場環境整備・キャリア形成を中心にした事業を行います。主に事業主様や労務管理担当者様とお会いすることが多いです。中小企業庁ミラサポ登録専門員、経営技術基盤・強化支援事業長崎エキスパートバンク専門家登録をさせていただいているので、こちらの方から申し込みを受けることもあります。
     やりがいはなんといってもすぐ動けること、そして相手様から「この情報がほしかったんです。ありがとうございます。」とお礼をいっていただけることです。
    【長崎県職業能力開発協会 厚生労働省委託 長崎職業能力開発サービスセンター勤務】
     キャリア形成サポーターとして、県内企業・団体の事業主・労務管理担当者・総務の方を中心に、キャリア診断サービス・キャリア形成のための面談・人材育成に関する国の助成金等の説明をしています。推進者講習会では、キャリア形成に関する伝達も担当します。この仕事は、国の委託事業なので、マニュアル通りに伝えていきます。キャリア診断サービスの結果を担当者様と一緒に考察し、会社の未来図をデータをもとに描いていく時、相手様の目が輝きを増します。その瞬間が嬉しいです。また、キャリア面談を体験した従業員様から「自分のキャリアを今まで立ち止まって考えたことがなかったんです。こんな時間は人生に必要なのですね。」とキャリア形成の必要性について理解していただく瞬間、やっていてよかったと思います。

  • 仕事(活動)と家庭の両立で工夫していること
  •  継続できるか、という事を自分に問い、無理にならないようにスケジュールの調整を心がけています。私は興味があると我を忘れて没頭してしまうので、常にスケジュール表とのにらめっこです。
     家事も大切な仕事なので、疲れてしまう前に家事をやる、疲れる前に休養のための時間を意識して作るようにしています。
     一番大事なことは、自分の健康管理です。

  • 座右の銘(好きな言葉)
  • どちらも人の心を導くうえで忘れてはならない言葉です。なかなか難しいことですが、常にそうありたいと自分を戒めています。
    1「不易流行」 2「我以外皆師也」

    1「不易」とはいつまでも変化しない本質的なもの。「流行」とは時代に応じて変化すること。
    人材育成においてはこの二つの考え方が非常に大事です。まず企業理念をしっかり理解するために、設立当初の思いをヒアリング、その後、今求められるもの、未来の会社の予想図について検討します。会社設立当初の思いをしっかり聞き、原点に戻りずっと変わってはいけないことを相談者の方に再度確認していただきます。そのうえで、時代の変化に応じて事業継続していくために、社員一人一人の成長のために必要なシフトチェンジの方法を検討・提案します。

    2 普段生活していると有り難いことであっても、あって当たり前だと思い感謝の心を忘れがちになったり、全ての人は全く違った考え方を持つのが当然なのに、自分の考えを基準にして考えてしまったりするものです。私の場合、悩みのほとんどが解消される言葉がこの「我以外皆師也」です。こう考えると気持ちが前向きになりすっきりしてきます。もちろん人間以外の動物や植物、自然に学ぶことも多いです。

  • これからしたいこと(今後の目標)
  •  これからは、今よりさらにダイバシティマネジメントに関する情報を当たり前にキャッチできる仕組みを作りたいです。特に、障害者雇用を行っている企業は、そのノウハウを生かし女性社員、高年齢社員、外国人社員、育児や介護を必要とする家族を持つ社員に対するキャリア形成を丁寧にできることが予測されます。ロールモデルになる企業の具体的な例の紹介、助成金などの利用方法、全ての社員様のセルフキャリアドッグ、ワーク・ライフバランスに取り組みたいとお考えの担当者様のお手伝いなどなどやりたいことがいっぱいです!

  • 後輩女性へのメッセージ
  •  今、自分の女性としてのキャリア人生を振り返ると、決して合格点ではなかったと思います。思いがけないこと、困難なことの連続でそのたびに希望の光が見えること、自分が元気で生きること、自分の大切にしているお世話になっている人たちの笑顔が見えることは何か、と考え迷った時の決断をしてきました。人生が100年だとすると私はまだまだひよっこです。たとえ夢の途中で人生が終わったとしても、夢を追いかけることができる人生に感謝しています。皆さんも勇気を出して自分のやりたいことに挑戦してくださいね。