輝く女性たち

西川英恵 / 花灯 -HANA AKARI-

ジャンル

 

  2018年春。10年以上ぶりに訪れたゴールデンウィークの波佐見・有田陶器市。息子が0歳の時にシングルマザーになり、ひたすら働き続けてきた中で突然の長い休暇が訪れたのは、勤めていた法律関係の事務所が突然廃業になり、失業したことがきっかけでした。折しも、息子が地元の大学に合格したばかり。子育ての大きな節目を越えたこともあり、次の仕事は焦らずに探そう…そんな頃でした。

 たっぷり時間をかけて窯元を回れることが嬉しくて、丸々2日かけて波佐見・有田を歩き回りました。そこで長い時間足が止まったのは、有名な窯元の賑わいとは対照的に、ひっそりと自分が手塩にかけた作品を展示販売している、若手作陶家さんたちの小さなブース。私も何か作ってみたいな、近くで陶芸教室を探してみようかなと思いながら帰宅しました。

 ところがいざ教室を探してみると、遠かったり、月謝が高かったりで、なかなか行けそうなところが見つかりません。そうこうしているうちにインターネット検索に引っかかってきたのは、低温で焼成できる、本格的な窯がなくても、自宅ですぐ使うことができるという陶土でした。

  ひとまずその陶土と、最低限必要な道具を取り寄せてみました。さて、何を作ろう?いきなり大きいものは難しいし…そこで制作を始めたのが、今の仕事のきっかけにもなった、茂木びわやハタなど、長崎のものをモチーフにしたブローチやイヤリング・ピアスなどでした。

 この頃まだ再就職先を探していましたから、あくまで自分の楽しみの範疇。でもせっかくだからと、インスタグラムのアカウントを個人のものとは別に立ち上げ、これまたせっかくだからと「花灯(はなあかり)」という名前をつけ、「ながさきぶろーち」「ながさきアクセサリー」というカテゴリーで、少しずつ作品の掲載をはじめました。

 

紫陽花のブローチ

 

 

 

茂木びわのイヤリング

  いざ取りかかると、写真や文章を工夫したりなど、つい凝り性なところが発揮されてしまったようです。そのうち、インスタグラムに掲載した作品を見てくださった地元の方々から、「どこに売っていますか?」「ひとついくらですか?」というお問い合わせをいただくように。当然、まだどこにも売っていませんでしたので、その都度ご連絡を取って、直接お伺いするという、なんともアナログなスタイルでの販売が始まりました。そうしてお求めいただいたお客様は、やはり長崎が大好きな方ばかり。「ほかにもこんなモチーフは作れませんか?」とリクエストをいただいたり、委託販売していただけるお店のご紹介を受けたりと、それからは自分の予想を超えた広がりが生まれました。作品の種類を増やし、イベントで販売する機会も得られるようになりました。

 同じ年の秋ごろには、長崎県物産振興協会からもお声かけをいただき、長崎らしさのある工芸品として、県内外の百貨店で開催される長崎物産展への販路が開けました。そのような流れですので、最初から起業しようとして始めたわけではなく、ご縁のできた皆様からの応援があって現在に至っています。

 結果的に短期間で事業として立ち上がることになったわけですが、最初のうちは、いただいた制作のご依頼や出展のお話などは、スケジュールが重ならない限りお受けするようにしました。

正直、短期的な経営面で考えれば、全ての仕事でしっかり利益が出たとは言い難くもありますし、効率的な仕事の仕方ではなかったかもしれません。体力度外視でもありました。

 しかし、うまく行かなかったからこそ気付けたこともたくさんありますし、それぞれの場所で新たな出会いがあったり、そこから思いがけない販路が広がったり、自分ひとりでは思いつかなかったアイデアもたくさん生まれました。これから3年目を迎えようとしているところですが、今までの経験をどれだけ活かしていけるかが特に重要な時期に差し掛かっていると考えています。

  制作やSNSなどの広報、出展先での販売から事務的なことまで、すべてひとりで行っています。今のところ、雇用を増やしたり、店舗を構えたりする予定はありません。自分の手の届く範囲で続けるつもりでいます。

 今年の初めは、東京、金沢、千葉と百貨店を移動しながら3週間にわたる出展もありました。健康管理には気を使いますが、もともと長距離移動は苦になりませんし(飛行機や乗り物が大好き)、枕が変わっても寝られるタイプ。物産展などで仲良くしてくださっている出展者の皆さんからは「ほんと丈夫よねー」とよく言われます(笑)。

          (令和2年5月現在)

 

桃カステラのピアス

 

 

 

ライフ年表

22歳:シングルマザーになり営業職に就く
28歳:子育て支援のNPO活動に携わる
34歳:法律事務所に勤務
40歳:司法書士事務所に勤務
41歳:花灯としてアクセサリー制作を始める
41歳:百貨店への販路が開けたことで起業を決意

  • 現在の仕事(活動)を始めるきっかけ又はやりがい
  •  生まれも育ちも長崎。長崎が好き、というよりも、長崎という町がとても大切なのだと思います。歴史があり、戦争で大きな傷を負い、それでも今は、温かい観光都市としてたくさんの素敵なもので溢れています。
     県外に出展すると「長崎っていいところですよね」と言っていただけることも多く、そんなときは作品が売れたことよりも嬉しいくらいです。そして地元でもたくさんの方に応援していただけで、とてもありがたく思っています。

  • プライベート(休日)の過ごし方
  •  家で保護猫を2匹飼い始めて、1年ほどになります。猫たちとまったり過ごすのはまさに至福。外では、道端で出会う猫や、長崎の景色をスマホや一眼で撮影したり、ひとり登山をしたり。
     ただ、自分で「今日はお休みにする!」と固く誓わないと、つい空いた時間に仕事をしてしまい、なかなかきちんとした休みになりません。そのため、日帰り温泉などに誘ってくれる友人にはとても感謝しています。

  • これからしたいこと(今後の目標)
  •  これまで陶土のながさきアクセサリー以外にも、水引や天然石など、様々な素材にも取り組んできました。しかし、これからは素材を増やしていくよりも、むしろ絞っていきたいと考えています。陶土は、ゼロから作品を生み出せるので、長崎らしいものはもちろん、アクセサリーなど身に着けるもの以外のクラフト作品にもチャレンジしていきたいです。